文具の歴史と豆知識

消しゴムの意外な起源:パンから始まった消す技術の歴史

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私たちが日常的に使用する消しゴムの歴史は意外にも古いのです。驚くべきことに、最初は食べ物の「パン」が使われていたという事実があります。本記事では、消しゴムの起源から現代に至るまでの進化の過程を詳しく解説します。

 

消す技術の始まりは、パン?!

16世紀、黒鉛が発見され、鉛筆として利用されるようになりました。しかし、当時は鉛筆で書いたものを消す良い方法がありませんでした。そこで人々によって考え出されたのは、なんと「パン」を使う方法だったのです。硬くなったパンを丸めて、鉛筆で書いたものを消していたといわれています。

パンの中には微細な空気が含まれており、微細な粒子を取り込みやすく、パンの表面をこすりつけることで、鉛筆の線がぼやけ、最終的には消えるのです。この方法は、驚くべきことに長い間使われ続けました。

貧乏な画家たちはデッサンで使った黒いパンを思わず食べていた、という逸話も残っているほどです。芸術家として生きることと、日々生活のために食べることの狭間で、切羽詰まった生活感がにじみ出ています。

 

天然ゴムの発見から消しゴムの誕生に

パンによる消去法が主流だった時代を経て、18世紀に大きな転機が訪れます。現代にまでつながる消しゴムの起源が、発見されたのです。

発見は、1770年に起きました。鉛筆の文字が、ブラジル産の天然ゴムで消えるとわかったのです。イギリスの化学者で、酵素の発見でも有名なジョセフ・プリーストリーによる出来事でした。

プリーストリーの発見から2年後の1772年には、イギリスで初めて角砂糖ほどの大きさの消しゴムが売られるようになりました。

当時、天然ゴムは貴重な素材でした。庶民には手が届かないほどの高価な値段がついていました。けれど、その後急速にヨーロッパ中に広まっていき、だんだんと庶民にも買える値段に変わりました。

 

消しゴムは進化と改良を続ける

19世紀に入ると、消しゴムの製造技術が大きく進歩します。1839年、アメリカの化学者チャールズ・グッドイヤーがゴムの加硫(かりゅう)に成功し、現在の消しゴムの基礎となる合成ゴムが誕生しました。

加硫とは、生ゴムに硫黄を混ぜて加熱し、ゴムの弾性を増加させる操作のことです。加硫という技術により、消しやすく耐久性も増した消しゴムが作られるようになりました。消しゴムの質は、ここで大きく向上したのです。

また、この時期に最初の「消しゴム付き鉛筆」も登場し、学生たちの必需品となりました。1858年には、アメリカのハイマン・リップマンが鉛筆の後端に消しゴムを付ける仕組みで特許を取得しています。

 

文字を書いて間違えたら消す、という作業がスムーズにできると、快適です。勉強する時にも、はかどります。

 

 

日本での消しゴムの歴史は

日本に消しゴムが伝来したのは、明治時代のことです。明治政府による義務教育の実施に伴い、鉛筆や消しゴムの需要が高まり、文具の輸入が増加しました。

日本で最初の国産消しゴムは、明治19年(1886年)にゴムの会社が消しゴムに近いものを国産したという記録があります。しかし、当初の国産品は品質があまり良くなく、製図用消しゴムなどは輸入に頼っていました。

本格的に日本で消しゴムが作られるようになったのは大正時代です。この頃からいくつかの消しゴムメーカーが誕生し、昭和3年(1927年)には製図用消しゴム国産第1号が完成しました。

待望の国産品です。

 

プラスチック消しゴムの登場

20世紀半ばになると、消しゴムの材料について、大きな革新が起こります。1950年代に入り、塩化ビニールを原料としたプラスチック消しゴムが登場したのです。

日本の消しゴムメーカーは、天然ゴムに代わる材質の開発と消す力を高める研究を続けました。その結果、1959年に日本のシードゴム工業(現在の株式会社シード)が世界に先駆けて「プラスチック字消し」を開発・販売しました。

プラスチック消しゴムは、従来の天然ゴム製のものに比べて消字性能に優れていました。特徴として、軽いタッチながらも、きれいに文字が消せるようになったことがあげられます。

また、プラスチック製の方が天然ゴム製のものよりも、においや色をつけるのが簡単で便利でした。

これで、急速に発展し市場の主流となりました。消しゴムにもさまざまな個性が出てきました。

 

現代の消しゴムと技術革新について

現在の消しゴムは、主にプラスチック(塩化ビニール樹脂)や合成ゴム(SBR)を原料としています。これらの素材は、文字を消す能力や耐久性に優れているだけでなく、様々な形状や色、機能を持たせることができるという利点があります。

最新の消しゴム製造技術では、微細な摩耗剤(微粒子)を添加することで、消去力を向上させつつ、紙への損傷を最小限に抑える工夫がされています。また、消しゴムの表面に特殊な加工を施すことで、摩擦係数を調整し、さらに消去力を高める技術も開発されています。

 

現代の消しゴムは、筆記具や用途に応じて様々な種類が存在します。例えば:

  1. プラスチック字消し:一般的な消しゴム
  2. ゴム字消し:鉛筆用の白ゴム
  3. 砂消しゴム:ボールペンなどの筆跡を消すためのもの
  4. 練り消しゴム:デッサンやパステル画で使用される柔らかい消しゴム
  5. 電動字消器:製図などに用いられる電動タイプの消しゴム

といったものです。

 

消しゴムの仕組みと正しい使い方

消しゴムが鉛筆の字を消せる仕組みは、実はとてもシンプルです。鉛筆で紙に書いた点や線は、紙の表面に黒鉛の粉末が付着しているだけの状態です。消しゴムでこすることで、この黒鉛の粉末を消しゴムの表面に吸着し、消しくずとしてまとめて取り除くのです。

効果的に消すためには、以下のポイントに注意しましょう:

  1. 消しゴムは清潔に保つ:使用後は表面をきれいにしておく
  2. 適度な力で消す:強すぎると紙が傷つく可能性がある
  3. 消しくずはこまめに取り除く:消しくずが邪魔をして、きれいに消せない場合がある
  4. 用途に合った消しゴムを選ぶ:鉛筆、色鉛筆、ボールペンなど、書いたものによって適した消しゴムが異なる

 

ノートに書いた文字を消そうと一生懸命になりすぎて強くこすってしまい、ノートが破れてしまった経験は、誰にでもあることです。消しゴムを使う力加減は、実際に使い続けて身につきます。

仕組みと使い方を理解していると、より効果的に消しゴムを使いこなすことができます。

 

環境への配慮をしつつ今後の展望は

近年、環境問題への意識が高まる中、消しゴムの製造においても環境への配慮が重要視されています。小さな消しゴムでも、環境について大きく貢献できることがあります。

環境へ配慮する取り組み:
  1. エコフレンドリーな素材や製造工程を取り入れる
  2. 環境への負荷を軽減しつつ、消去力を向上させること
  3. 素材にリサイクル素材を使用した消しゴムを作る
  4. 使用後に植物の種が発芽するよな環境に配慮した消しゴム
  5. 消しゴムの製造過程で発生する廃棄物を削減
  6. エネルギー効率を改善

以上のことがあげられます。

今後の消しゴムの展望としては、さらなる技術革新による性能向上が期待されます。例えば、ナノテクノロジーを活用した超微細な消去技術や、特定の筆記具にのみ反応する選択的消去機能などです。より精密で効率的な消しゴムの開発が進むかもしれません。

また、デジタル技術の発展に伴い、デジタルデバイスと連携した新しいタイプの消しゴムも登場する可能性があります。例えば、消した内容をデジタル化して保存できる機能や、AIを活用して最適な消し方を提案する機能など、従来の消しゴムの概念を超えた製品が生まれるかもしれません。

今後、どのような「消しゴム」が登場するのか、見守りたいです。新しいタイプの消しゴムがでてきたら、実際に使って自分の目で確かめたくなります。

 

中高生時代の思い出

1980年代後半、私が中学生だった頃は、まさにプラスチック消しゴムが主流になり始めた時期でした。当時、私の学校では「モノ消し」という白い四角い消しゴムが大人気でした。その消字力の高さから、友達の間で「モノ消しじゃないと消えない」という噂まで広まっていたほどです。私も憧れて買ったのを覚えています。

また、高校生になると、可愛らしい形や香り付きの消しゴムが流行しました。ケーキや果物の形をした消しゴムや、イチゴやバナナの香りがする消しゴムなど、文房具店に行くたびに新しい種類の消しゴムが並んでいて、ワクワクしたものです。

 

当時は、消しゴムを集めることが一種の趣味のようになっていて、友達と「どんな消しゴム持ってる?」と見せ合うのが楽しみでした。

 

 

まとめ

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私たちが日常的に使用する消しゴムの一つ一つに、長い歴史と多くの人々の努力が詰まっていることを思い出し、大切に使っていきたいものです。そして、これからの消しゴムの進化にも、注目していく価値があるでしょう。

 

 

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